テンペ研究会のあゆみ

テンペ研究会は、本年〔1995 年(平成7 年)〕に創立11 周年を迎えたが、時を同じくしてインドネシアのジョグジャカルタ市で4 月15 日、16 日の両日インドネシア全国テンペ会議が開催され、同時に「インドネシア・テンペ財団(協会)」が設立された。このテンペ会議に日本から参加した「テンペ研究会」が招かれ、会員の8 名が参加した。この会議の主催はインドネシア政府食糧省の組織委員会で、国内の幅広い分野の専門家並びに食糧大臣の出席もあった。この会議終了後、全く予期していなかったことであるが、インドネシアに設立されたばかりの「テンペ協会」から日本の「テンペ研究会」に研究および普及事業に対する申し入れがあり、イブライヒ・ハッサン食糧大臣立合いのもとに「インドネシア・テンペ協会」代表と「テンペ研究会」代表の両者間で正式な協力合意文書が交換された。

そこで、テンペ研究会〔テンペ研究会の発起人は(故)村田希久先生(大阪市立大名誉教授)、(故)渡辺忠雄先生(九州大学名誉教授)〕を紹介すると1984 年に食品、栄養、調理、人文科学など各分野の大豆研究者によって設立され、本年で11 年目を迎えた。その間、テンペ研究会は多くの会員のたゆまざる努力により、無塩発酵大豆を中心とした製品の生理化学的解明とその成果を基盤とした調理科学の研究が続けられている。また、テンペ製品は、日本各地で製造されるようになり、量的には少ないが食品素材として利用されるようになった。従って、研究会としては研究領域の拡大と共に調理法の紹介、普及についても努力しなければならないと考える。

この10 年余の研究会のあゆみは、各年間の春と秋の年2 回の研究発表会が各都市で開催された。この発表会は、幅広い専門分野からの自由な参加で、テンペに限らず、大豆に関係する各分野からの発表が行われている。また、国際会議は、1985 年(昭和60 年)7月につくば市での第1 回「アジア無塩発酵大豆会議」開催をはじめとして、第2 回国際会議を1990 年2 月にインドネシアのジャカルタ市で開催し、第3 回会議は、1994 年6 月秋田市を会場として国際大豆食品フェアと共に開催された。

特に第1 回のつくば市の会議は、科学万博の開催日時と重なったため、一般の入場者も多くを数え、外国からは、インドネシア、タイ、ネパール、フィリピン、香港、シンガポール、米国、西ドイツ、デンマーク、オランダ、ナイジェリアなど15 ヶ国の多数の専門家の参加があった。一方、会場の様子は、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなどでも報道され、国民の間に大豆ならびに大豆製品を含めた食糧資源の利用について、あらためて見直す絶好の機会となった。なお、第2 回のジャカルタ市での会議、第3 回の秋田市を中心に開かれた会議については、いずれもすでに報告がなされているので割愛する。

テンペ研究会発足の当時は、一般市民から「テンペ食品とは何ですか」とよく問われたものである。しかし、この11 年間を経た現在は、婦人雑誌や料理雑誌などでテンペの効用や料理法などが記事として取り扱われるようになり、日本でもやっと大豆発酵食品であることがしられるようになった。一方、アメリカ、その他の先進国では、健康上の観点から、近年東洋型の食生活に対する関心が高まりつつあり、テンペが健康食品として利用されていることは、ご承知のとおりである。

今後のテンペ研究会は、先のインドネシアとの協定に伴う共同研究や普及など両国間で連絡をとりながら発展させねばと考えている。なお、本年度の秋期大会は、11 月24 日(金)につくば市で開催の予定である。また、研究会では本年から、年1 回の研究会誌を発刊することになった。

以上の研究会の事業の趣旨に賛同いただき、先生方や企業の皆様の多数のご加入を歓迎している。

テンペ研究会会長(第三代) 熊本県立大学教授 太田直一 著

※下線部は編集委員会が加筆
「大豆月報」平成7(1995)年8 月号 (大豆供給安定協会)
今月の言葉より引用